花屋敷の主人は蛍に恋をする
「菊那さんのロングカーディガンは薄く長い丈は危険なので、私のジャケットをお貸ししますね」
「いいんですか?」
「少し大きいと思いますが…………オーバーサイズで可愛いですね」
そう行って、着せてくれたのはライダースジャケットだった。身長が高い樹のものは確かに大きかったけれど、菊那は思わず笑みがこぼれた。彼の紅茶のような甘い香りがしたのだ。
「さて、これが菊那さんのヘルメットです。どうぞ」
「わぁーかわいい!ありがとうございます!」
白いヘルメットに薄い黄色で花が描かれているものだった。パッと見るとシンプルに見えるが華やかさがあり、菊那は一気に気に入ってしまった。
「菊那さんは黄色のお花のイメージですからね。あ、でも猫の耳がついたヘルメットもありましたよ」
「………こっちで安心しました」
菊那がむつけた顔でそういうと、樹は目を細めて楽しそうに笑った。