花屋敷の主人は蛍に恋をする
24話「ブルームーン」
24話「ブルームーン」
デートの帰り。
すっかり夜になり、住宅街にある菊那のアパートはひっそりとしていた。
菊那の家には、樹が来てくれていた。
彼が菊那の部屋に来てくれるのは初めての事だった。樹の屋敷よりもかなり小さいアパートの1室。刺繍の道具や材料も多いため、雑多としているのがとても恥ずかしかった。けれど、樹は「菊那さんらしい部屋ですね。お花がモチーフなものが沢山あります」と、菊那が作ったものや雑貨などを褒めてくれた。
菊那が出した、樹から貰った紅茶を飲んだ後、2人は狭いベランダへと向かった。
「土に肥料も混ぜてありますね。それなら大丈夫です。1、2センチぐらいの穴なので………それぐらいですね。そのに2.3粒入れて。……このプランターなら、3ヶ所に蒔けますね」
「………穴をあけて……ここらへんだね」
菊那は樹のアドバイス通りに土に穴をあけて、種を巻いた。白と黒の縞模様のあの種を。
「そして、土を被せて……」
「はい。後は多めに水をあげてください。そして、陽の当たる場所に置いて日光を浴びせてあげればきっと芽が出てきますよ」
「………楽しみだなー。今度こそ、向日葵が咲くんだ………」
まだ種を蒔いたばかりのプランターを見つめながら、菊那は期待の視線を向けていた。