花屋敷の主人は蛍に恋をする



 「………違うよ!紅茶を御馳走してもらうの!」
 「なるほど。……あなたになら何杯でも御馳走したいので、それはペナルティーにならないですね」
 「それなら……私だってペナルティーにならない…………」
 「………あなたは……………。本当に可愛いことを言ってくれますね」


 少し生意気な事を言ってしまったな、と緊張してが、樹は少し驚いた顔の後、笑ったので安心をした。

 菊那は彼を見上げる。
 こうやって、甘え方まで覚えて彼を求めてしまうなんて。
 自分の変化に驚きながらも、菊那は樹の顔が近づくとゆっくりと目を瞑った。

 


 毎年、ビクビクした気持ちで不安な気持ちのまま迎えていた夏。
 けれど、今年からは違う。
 
 黄色の花の成長を楽しみにしながら、夏を待つ。
 そんな明るい夏が見えるような気がして、菊那は微笑みを浮かべながら彼の唇の感触を待ったのだった。




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