花屋敷の主人は蛍に恋をする
25話「ノヴァーリス」
25話「ノヴァーリス」
「クレオメの花言葉は、秘密のひととき………かぁ………」
一輪挿しのガラスに入れてテーブルの上に飾ってある、尾崎から貰った花を見ては、独り言を洩らした。
あれから数日が経ったが、ヒントとしてくれたこの花の意味がわからなかった。
この花の名前と花言葉を調べたり、花の性質などもいろいろネットで読み漁ったけれど、樹に繋がるものはなかった。
クレオメという花は夕方から咲き始め、翌日の昼頃にはしおれてしまうという、1日花だった。けれど、尾崎からもらった花は枯れる事はなく、立派に咲いていた。これも屋敷の花だからなのだろうか。
菊那は、はぁーと大きく息を吐いて、テーブルに片頬を付けて体を脱力させた。
このところ、樹の事ばかり考えている。それ自体はいつもの事かもしれないけれど、彼の秘密をこっそりと探っているのはやはり申し訳なさがある。
それに秘密を知ったらと言って、彼を思う気持ちなど変わるはずがないのだから、何をコソコソと調べる必要があるのだろうか。と、内心では思ってしまう。
けれど、やはり気になってしまうのだ。
「クレオメの花を選ぶなんて、尾崎さんわざとかな……」