花屋敷の主人は蛍に恋をする



 花言葉で「秘密のひととき」とあると、やはり樹の事を指しているのではないかと思ってしまう。

 菊那はその日も、ネットでクレオメの花について調べていくうちに、夜が深まっていくのだった。





 「大丈夫?最近はため息ばかりだけど」
 「ご、ごめんなさい………少し寝不足なだけだから」
 「そうなの?この頃元気ないから心配してたのよ」


 カフェで働いている時に店長に心配されてしまうぐらいに、菊那はその日は眠たかった。花の事調べているうちに、寝る時間が少なくなってしまっていた。
 この間、樹に会った時もボーッとしてしまって、「体調でも悪いんですか?」と、言われてしまった。周りの人に心配かけるのはダメだ、と反省しながら仕事に集中していた。けれど、考えてしまうのだ。あの花の事を。


 尾崎は「この花がヒント」と言った。
 だから、その花が何という名前なのか。花言葉は何なのか?いつ咲いて、どこに咲く花なのか?詳しく調べたつもりだったが、それでもよくわからなかった。自分の理解力が足りないのではないか、といろんな事を繋げて考えてもみたが、答えには導かれない。

 考え方を変えてはどうか。
 あの花は樹の屋敷の花だと言った。クレオメは1日花なのに枯れもしない不思議な花。
 ………屋敷の花は不思議な力で枯れもせずに咲く。だから、四季の花が同時に咲くのだ。


 「…………もしかして、あの花自体がヒントなの?」


 菊那はカウンターで食器の整理をしながら、言葉がもれた。
 そして、それを思い付いた瞬間に早く家に帰って確認しなければ。そう思った。




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