花屋敷の主人は蛍に恋をする
「その少年はどうして花を盗んだのでしょうか?しかも、チョコレートコスモスという茶色の花を……。菊那さんはどう思いますか?」
少年を見つける作戦を立てようという話になり、樹はそう質問してきた。
男の子が花が好きな理由は?素直に考えれば答えはひとつだった。
「女の人にプレゼントするためでしょうか?チョコレートコスモスというとバレンタインを思い浮かべますけど、今は時期的に遅いですし……」
「バレンタイン……なるほど、思いつきませんでした。女性の視点は面白いですね」
樹はそう言うと、クスクスと微笑みながら、少し冷めてしまった紅茶を一口飲んだ。そして、短い時間考えてた後、口を開けた。
「私も誰かにプレゼントするのではないか、という考えに賛成です。ですが、もし女性に贈るのであれば、どうして華やかな色ではなく、わざわざ茶色の花を選んだのか、というのは不思議な所ですよね」
「確かにそうですね………」
「ですが、プレゼントをするのに一輪というのは寂しい気がしませんか?」