花屋敷の主人は蛍に恋をする
26話「ナイト・タイム」
26話「ナイト・タイム」
「樹さん。……聞きしたいことがあったの。ずっとその事を考えてた……その話をしてもいいかな?」
「えぇ。もちろん、聞かせてくれませんか?」
樹が優しく心配してくれたのに、彼の秘密を聞こうとするなんて、止めた方がいいとはわかっていた。
けれど、彼を知りたいという気持ちの方が勝ってしまった。
「樹さんが心配してくれるはとても嬉しい。でも、その………最近、考えてた事は樹さんの事なの。………いつも優しくしてる、相談にも乗ってくれるし、私の夢を応援してくれる。………けど、私は樹さんの事を知らなって考えてた」
「…………」
「そして、きっと樹さんを知るにはあの花屋敷の庭について知る事が1番早いような気がしたの。………あの四季の庭には沢山の不思議と魅力と………秘密があるから」
「……なるほど、確かにそうかもしれませんね」
「だから、聞かせて欲しいの………あの庭の事。樹の事を」
菊那はテーブルの下で、こっそりとギュッと手を握りしめた。
自分から話そうとしていない事を聞き出すのはよくないとわかっていた。
口に出した瞬間に、後悔の念に襲われる。けれど、言葉にしたことはなかったことは出来ないのだから、後は彼の返事を待つしかないのだ。
きっと彼なら話してくれる。そう信じて菊那は彼の次の言葉を待った。
けれど、すぐには返事はない。
菊那は恐る恐る、顔を上げて彼の方を見ると、とても困った顔をしていたのだ。
そんな表情を見てしまえば結果はわかってしまう。
菊那は胸がキリリッと痛んだ。