花屋敷の主人は蛍に恋をする



 樹は突然のプレゼントに戸惑いながらも、微笑みながらもそのブーケを受け取ってくれた。
 そして、少し茶色が混ざった赤い花を受け取り微笑んでくれる。やはり、彼は花が似合う。今日のラフな格好に薔薇のブーケというのは、ズルいぐらいにかっこいい。
 そんな彼を菊那はジッと見つめてしまった。


 「ブラックティーという名前なので、紅茶の香りがすればいいのですが」
 「私もそう思ったんだけど……やっぱり花の香りだったよ」
 「菊那も嗅いだんですね」


 そう言うと、樹は微笑みながらブラックティーの花びらに触れた。とても大切なものに触れるように優しく。


 「…………っっ!………」


 その瞬間を菊那は息を飲んで見続けた。
 けれど、花は何の変化もない。
 菊那は思わず小さく息を吐き、寂しさを感じながら樹が触れた花びらを見つめた。


 「…………花が枯れると思いましたか?」
 「え…………何、言って………」


 声が上擦ってしまう、うまく話せない。
 けれど、菊那は必死に笑顔を作り、彼の言葉の意味をわからないように誤魔化そうとした。


 「樹さん、何を言ってるの?私はただ、樹さんに花をプレゼントしようと思っただけで……」
 「では何故そんなに焦っているのですか?」
 「………そんな事は」
 「菊那さんは、私が花枯病だと思ったのではないですか?」
 「……………」


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