花屋敷の主人は蛍に恋をする



 一輪の花をプレゼントするというのも素敵だけれど、確かに少し物足りない気もしてしまう。特に女性に花を贈る時は『花束』というイメージがある。
 と言う事は……そこまで考えて菊那はハッとした。


 「もしかして、またこの花屋敷に花を取りにくるかもしれない………っ!!」
 「そう、私も思います」


 菊那が考え付いた事を思わず大きな声で言うと、樹はにっこりと優しく微笑んで同意してくれた。彼が答えに導いてくれたのに、答えを譲ってくれたのだ。やはり、彼は紳士だなと菊那は思い、心の中で感謝をした。


 「その少年はいくつぐらいでしたか?」
 「たぶん、小学校低学年ぐらいかと………」
 「そうなると、平日の午前中に来ることはないでしょう。それに今日は休日ですしね」
 「では、次の休日か平日の夕方になりますね」



 夕方には仕事は終わっているが、いつ来るか、そして来るかわからない少年を毎日待つのは時間が取れない。休日のみに狙いを定めよう。そう伝えようとしたが、すでに遅かった。




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