花屋敷の主人は蛍に恋をする
「樹さん!もう……そんなに笑わないでください!」
「くくく………ごめんなさい………大切な話をしてるのに。あー………本当に君は可愛い。突拍子もない事をしてくれる…………」
「本当に食べたわけではないのに………」
「わかっていますよ。……わかっている……君が傷つかないか、心配だから話すのを躊躇ったんだ」
樹は自分を落ち着かせるために、ふーっと大きく息を吐いた後、菊那の頭を優しく何度か撫でた。
そして、そのまま手を下ろして菊那の手を両手で握りしめた。
「君の話したように、屋敷の花は全て造花だ。…………それには花枯病が関係しているのも確かだ。…………長くなるし、楽しい話でもない。それでも、聞いてくれますか?」
「………うん。聞かせて欲しい」
菊那が強い視線で彼の真っ黒な瞳を見つめながら頷くと、樹はそれを受けて「わかりました」と小さく返事をした。
そして、庭のある花を見つめた。
彼の視線の先には、黄色の花。
太陽の花と呼ばれる、向日葵の花があった。