花屋敷の主人は蛍に恋をする
樹はそう呟きながら、原因を探った。
花に元気がないと、どうしてたのか考えてしまう。職業病なのだろうか。
内心で苦笑しながら、樹は土に触れて考え始めた時だった。
突然人の気配がした。それと同時に先ほどまで太陽の光があったのに、樹も花にも影が出来ていた。
「…………私がこの間、間違って触ってしまったの。だから、元気がないのよ」
そこには、自分より年上だろう女性が居た。黒い日傘をさしたその女は、顎ぐらいの長さの髪をまっすぐに切った、変わった髪型をしていた。そして、妙に体が細く色白だった。いや、青白いと言った方がいいぐらい顔色が悪かった。
「………あなたが触れたから、この花が元気がないんですか?」
樹は彼女が何を言っているのかわからずに思わず初対面の女にそう聞き返してしまった。女は「………知らないのね」と、無表情のまま呟くと、先ほど樹が心配してみていた桔梗の花に手を伸ばした。
すると、先ほどまで懸命に咲いていた紫の花はみるみる枯れていき、あっという間に茶色となった。そして、カラカラに乾いた枯れ葉となって、土に落ちたのだ。