花屋敷の主人は蛍に恋をする
「碧海さんっ!」
「……………樹くん……」
植物園の裏手にいた碧海に気づき、樹はすぐに近寄った。裏手には、関係者だけが立ち入れる小さな研究施設があった。樹も訪れる場所だったので、鍵を持っていたため、そこに碧海を招き入れた。
「消毒しますね」
「…………」
研修室は誰もいない。
救急箱から絆創膏などを取り出して彼女の傷を手当てしていると、碧海は小さな声で話し始めた。
「………ごめんなさい」
「え…………」
「植物園の花、枯らせてしまった………。本当にごめんね」
「いいんですよ」
「だって絶滅危惧類なんでしょ?大切な花じゃない!?」
「種はあります。また植えればいいんです」
涙をポロポロこぼしながら謝罪する碧海にそう返事をするが、彼女の涙と悲しみの表情は止まらない。
「………やっぱり、私って不気味だよね。あんなの見せられたら、恐ろしい。………人間じゃないみたい」
「………そんな事ないですよ」
「そんな優しい嘘言わないでよ!あんなの恐ろしいだけよ。綺麗な花が一瞬で枯れるのんだよ!私が1番怖いの!花が枯れていく瞬間も、他の人の視線も…………」
大声を出してそう言う碧海を落ち着かせるように、樹はゆっくりと言葉を伝えた。
彼女と出会ってから考えていた事だ。