花屋敷の主人は蛍に恋をする
31話「青空」
31話「青空」
「菊菜、大丈夫ですか?そんなに泣き続けてしまうと、目が真っ赤になりますよ」
「…………だって、止まらないから」
「あ、擦ってはだめです。………あぁ、もう赤くなってますね」
少し落ち着いたけれど、涙は止まらない菊菜を心配して、少しだけ体を離して様子を見つめる樹は、困った顔で菊菜を見つめたあと、慰めるように目元にキスを落とした。
菊菜の緑色になりつつある瞳の近くに。
菊菜はそれがイヤでギュッと目を瞑ると、今度は瞼の上に彼がキスをしたのから、柔らかい感触を感じた。
「あなたに碧海の話しをするべきがずっと悩んでいました。菊菜が知られたくないのなら、聞く必要はないのではないか。そう思っていました。…………けれど、菊菜はずっと私に隠し事を持ち続ける事になる。それに………花枯病になって不安になっているはずだと思ったのです。………だから、思い切って聞くことにしました」
「気づいていたなら、言ってくれればよかったのに………」
「…………怖がると思ったのですよ。同じ病気で辛い経験をした事や亡くなってしまった話しなど、あなたを不安にさせるだけだとわかっていましたから」
「……………」