花屋敷の主人は蛍に恋をする
花枯病はとても稀な病気で、知らない人も多い病だ。そのため、ネットや書籍などでも詳しく載っていないのだ。そのため、少ない資料で調べたり、実際に花枯病のと客さんに会って話す機会はあったが、深い話しなどは知ることはなかった。
「いつくか…………症状をお聞きしてもよろしいですか?」
「はい」
「菊菜さんが発病したのはいつですか?」
「………3年ほど前だよ。もしかしたらもっと前かもしれないけど、おかしいなと思ったのはそれぐらい」
「なるほど。では、症状は瞳のほかにどんなものがありますか」
「少し前までは私が触った花が枯れるのが早いなと思ったの。でも、最近は花や草に触れるとゆっくり枯れていくようになって……口の中に葉ものの野菜を入れてもカサカサになってしまうのがわかるぐらいに………」
菊菜の花枯病の進行は進んでいるように感じられた。それが数年で起こっているので、菊菜にとっては怖くて仕方がない事だった。
「樹さん。これって、やっぱりダメですよね。進行、悪い方に行ってますよね?」
話しながらもまずい方向に向かっていると思い、菊菜を更に顔を青くして樹に恐る恐る問かける。すると、樹は菊菜の頭をポンポンと撫でると、「落ち着いてください。ゆっくりお話ししますね」と、言ってくれる。その表情が穏やかなのを見て、菊菜は安心してしまう。好きな人と居ると、どうしてこんなにも心が温かくなるのだろうか。一人で悩んでいる時は固く冷たいものになってしまうのに。
「私は専門医ではないので、確定ではないですが。植物学を勉強したものとして研究した話しを伝えますね。まず、先天性のものではなく突発性のものでも、花枯病が治った事例はありせん」
「…………そう、ですよね」