花屋敷の主人は蛍に恋をする
32話「ルージュロワイヤル」
32話「ルージュ ロワイヤル」
その日は、樹がデリバリーを頼んでくれ、屋敷の庭で2人きりの夕食を楽しんだ。
話しは自然と花枯病の話しになっていく。
「じゃあ、この屋敷の花は尾崎さんと一緒に作ったんだ」
「いろいろ助けて貰ったな」
「じゃあ、何で喧嘩してたの?」
「喧嘩?………あぁ、もしかして、玄関先で言い合いになっていたの、見てたのか?」
「うん。仕事が早く終わったから屋敷にお邪魔しようと思ったんだけど。2人が話してたから。その後に尾崎さんから屋敷と同じ花だって、お花を貰ったんだ」
「なるほど……そういう事だったんですね。尾崎は、花枯病患者のために、私が作った花を商品化したいって何度も交渉してくるので。まぁ、仕事として協力してくれたのですから、当たり前なんですけど。………なかなか、そんな気持ちになれなかったんです。お金を貰ってあげるものなのかな、と」
「………私はいいと思います」
「そう、ですか?」
菊菜がそう自信を持ってそう言い切ると、意外な返事だったのか樹は少し驚いた様子だった。
菊菜は、これについてははっきりと言える事があった。
「花に触れられる人は、欲しい花があったら花屋さんに行って買う。花枯病の人は、樹さんの枯れないお花を買う。それでいいんじゃないかな……。それがいい、です。私も自分が欲しいと思った花を自分で選んで買いたい」