花屋敷の主人は蛍に恋をする
樹の寝室はとても大きい。
アンティークのものなのか、綺麗な花の模様の彫刻があしらわれた飾りが頭の部分に飾られていた。とても繊細で豪華な作りに、菊菜は初めて見た時は心奪われたものだった。それからも言うものの、彼の家に泊まる度に、それを見てはうっとりとしてしまう。そんな様子を見て、樹は「本当に好きですね」と笑うのだった。
「そんなに好きでしたら、毎日ここで寝てもいいんですよ?私もその方が嬉しいです」
「そんなに甘えられないよ!」
「…………あぁ、では言い方を変えますね。菊菜、この屋敷で一緒に暮らしませんか?」
「…………ぇ………」
突然の誘いに、菊菜はベットの上で固まってしまった。彼と一緒に買ったルームウェアに身を包み、ふわふわのベットに座っていた菊菜は、久しぶりに彼と一緒に寝れる事に少々浮かれすぎていたようだった。樹が伝えたかった事を理解するのに、直球で言われないと気づかなかったのだ。
やっとの事で理解した菊菜は、その瞬間から顔を真っ赤に染めた。
どう返事をしていいのかわからず「えっと………その、急にそんな事……」と、戸惑っていると、樹が菊菜に近づきベットがギシッと鳴った。
いつも、彼と抱きしめあっておやすみとキスをしてから眠るだけのベット。それだけなのが寂しいと思っていた。どうして、求めてくれないのか、切なく悩んだ事もあった。
けれど、ベットが軋む音と、近づいてくる彼のいつもと違う焦っている表情に、菊菜はドキッとして、この先に待っている事を予感した。
こういう時の女の勘は当たるものだ。