花屋敷の主人は蛍に恋をする
「ん………菊菜………起きていましたか」
「おはよう」
「おはようございます」
そう言うと、樹は腕を持ち上げまた菊菜にキスを落とした。
寝たことで昨夜の熱は完璧に冷めたはずなのに、たった1つの事でまた熱が上がってきてしまう。
「……体は大丈夫ですか?」
「え、あ………うん。大丈夫………。その1つだけ恥ずかしいこと聞いてもいい?」
「恥ずかしいこと?」
「その………昨日の夜は、大丈夫だったかな?」
「大丈夫とは?」
菊菜は顔を真っ赤にしながら、彼の胸に顔を隠した。
昨日お互いに裸を見せたというのに、やはりまだ照れてしまうのだ。きっとこれには慣れるはずもないだろうな、と菊菜は思った。
けれど、どうしても気になるので菊菜は小さな声で彼に問い掛けた。
「…………その、私、久しぶりだったし……そんなに経験もないから……その樹さんは……ちゃんと気持ちよかったのかなって………」
最後の言葉はどんどん小さくなり、聞こえていなかったかもしれない。けれど、それでもいいかと思うほど、菊菜は恥ずかしく顔から火が出そうになる、という経験をした。樹といると、照れてしまう事が多い気がする。
それぐらいに、彼が愛おしいという事だが。
「本当に………あなたは、可愛らしいですね。私の恋人にあなたがなってくれたのが、信じられないです」
「そんな!それは私の台詞………」