花屋敷の主人は蛍に恋をする
エピローグ
エピローグ
「樹さん、ちゃんと決めてきた?」
「えぇ、もちろんですよ」
この日も、仕事帰りに樹の屋敷にお邪魔をしていた。最近では、この屋敷から出勤をすることもあり、少しずつ菊菜の荷物が増えていっている。半同棲のようになってしまっているので、菊菜は自宅に帰ろうとはするがいつも樹に引き止められてしまうのだ。
そして、今日はずっと楽しみにしていたある事をする日だった。
それは、出会った頃に菊菜が約束した事を実行する日になっていた。
「何千種類もあるのに、選ぶのは大変だったよー」
「私も久しぶりに図鑑をずっと見ていました」
「どんなのを選んでくれたのかたのしみだなぁ」
今日は相手にピッタリの薔薇の品種をお互いに決めて披露する日になっていた。
菊菜が言い出した事だったけれど、いろいろな出来事があり遅くなってしまった。
それに、実際にその薔薇を取り寄せるとなるとかなり大変で時間がかかってしまったのだ。
「じゃあ、私からね。私が選んだのはこの花です!」
薄手の手袋をして紙袋から取り出したのは、緑色の薔薇のブーケだった。小ぶりで、少し黄色が入った薔薇を選んだのだ。植物の名前が入った樹なので緑系の薔薇にはしたかったが、向日葵を大切にしている事から黄色もはずせなかった。
なので、その薔薇を選んだのだ。
「これは………エクレールですね。綺麗な花です。私に似合いますか?」
「とっても似合うっ!」
「ありがとうございます。嬉しいです」