花屋敷の主人は蛍に恋をする
5話「ウィミィ」





   5話「ウィミィ」




 「樹さん、では菊も沢山の種類があるんですか?」


 花の話をすると樹には自然な笑顔が見られるような気がして、菊那は自分の名前に使われている花の話をしてみた。
 すると、笑顔で「もちろんです」と話してくれる。


 「菊というと、仏壇やお墓に飾る菊のイメージが強いですが、最近はダリアのように大輪で華やかなものが多いのです。菊那さんが、好きそうな名前の菊もありますよ」
 「え?」
 「ビターチョコ、ココアなどです」
 「………甘いもの好きって事でしょうか?」
 「ケーキを気に入ってくれたのでそうかと思いましたが………」
 「……大好きです!」
 「それはよかった」


 あっという間になくなってしまったケーキの皿を見てクスクスと笑うと樹。菊那は食い意地の張っていると思われてしまったようで、少し怒り口調で返事をしたが、彼には全く伝わっていないようだった。


 「この庭にはどんな菊が………」
 「………来ました………」
 「え……」



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