花屋敷の主人は蛍に恋をする
「どうしてそう思われたのですか?」
「何だか父さんと母さんと雰囲気が似てたから。優しい雰囲気………とか」
少し照れた様子でそう言うと紋芽を見て、菊那はハッとした。
樹の事を自分の父親のように優しいと紋芽は感じられていたのだ。叱られても自分の事を思ってくれ、そして自分の家族を思ってプレゼントを準備してくれた樹の事を優しいと思えたのだ。
そんな恥ずかしそうにする紋芽を見て、菊那はホッとしたのだった。
やはり、少し厳しくても気持ちを込めて接した樹の行動は正解だったのだ。改めて、彼の本当の優しさを菊那は感じられた事に心が温かくなった。
そんな事を心の中で考えていると、樹が口を開いた。
「そうですか。それは嬉しいですね。………実は、まだ恋人同士ではないのですが、この後彼女をデートに誘おうと思っていたところです」
「え…………」
「そうだったんだ。菊那さん可愛いし、樹さんはかっこいいから、とってもピッタリだと思う!結婚式には呼んで欲しいですっ!あ、菊那さん、チョコレートコスモスのブーケも似合いそうですね」
「け、結婚………っ!?」
「確かにそうですね。それは素敵です」
「い、樹さん………っ!」
突然の話題に焦って顔を真っ赤にしている菊那をよそに、紋芽はとても真剣に、そして樹は楽しそうにまだ恋とも言えない2人の関係の未来を語っていたのだった。