花屋敷の主人は蛍に恋をする
「………ありがとうございます。そして、花泥棒探しも無事に終わりました。菊那さんのおかげです。紋芽さんも菊那さんの隣だと安心していたようなので、最後までお付き合いいただけて感謝しています」
「いえ………そんな………」
「それでは、先ほど話した通りに、デートにお誘いしても?」
「………え………」
まさか、先ほどの話が続いているとは思わず、「デート」という言葉が出てきて、体がビクッとなるほど驚いてしまう。
そんな反応をみた樹は優しく笑い、「お礼においしいものをご馳走させてください。この時間ですとランチは早いのでお茶にしませんか?」と、誘ってくれたのだ。そんな彼の言葉を拒否するはずもなく、菊那は「はい………」と返事をするのだった。
彼が連れてきてくれたのは、ビルの地下にある小さな店だった。地下だというのに、吹き抜けの中庭があり、明るい雰囲気の店で、入った瞬間に甘いお茶の香りが出迎えてくれた。
席に着きスタッフがメニューを渡してくる。樹はそれを受け取り、菊那に見せながらお店の事を教えてくれた。