花屋敷の主人は蛍に恋をする
「今は寒くないので、庭でお話しましょうか?」
菊那が庭を眺めていたのに気づいたのか、樹はそう言って庭にあるソファに案内してくれた。1番始めに彼と紋芽で話をひたあの座り心地の良いソファだ。菊那「はい」と返事をすると、「それでは温かいものを準備してきますので、庭を見て待っていてください」と言い残して屋敷に入ってしまった。
一人残された菊那は、うろうろと庭を回った。庭には花達を見てまわれるように小道が出来ていた。屋敷と同じ色のレンガが土に埋まっている。そこの上をゆっくりと歩きながら菊那は不思議な四季の庭園を歩いた。桜の下にはコスモスがあったり、ラベンダーの隣に向日葵があったり。花に特別詳しいわけでもないが、メジャーな花を見ているだけでもこの庭が特別だと言う事が見てわかる。
「ここにくれば、助けてくれると思ったの……だから、花屋敷の主人に会いに来た」
ここの花達はきっと特別な力を与えられたのだろう。あの不思議な主人である樹に。すぐに相談してしまえれば、彼から話をされる事はなく聞いてくれたのかもしれない。けれど、紋芽の事があり話すタイミングがなかったのだ。
………いや、それは言い訳にすぎない。彼に話を聞いて欲しいと伝えたいれば樹ならば聞いてくれたはずだ。
それが出来なかったのは怖かったからだ。樹が怖かったからではない。断られたり、失敗するのが怖かったのだ。
あの人との繋がりが本当に切れてしまうようで。