花屋敷の主人は蛍に恋をする
10話「レイニーブルー」
10話「レイニーブルー」
菊那が思い出したくない記憶の先。
それは忘れもしない中学の頃だった。
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元々大人しい性格だった菊那は子どもの頃にある趣味を見つけた。それは縫い物や編み物などの裁縫だった。小学生の頃から好きになり、コツコツと作り技術を磨き、お小遣いやお年玉を貯めて、編み物セットやミシンを買ったりしていた。
特に刺繍にハマった菊那は、中学生の頃には本格的になっており、ハンカチに名前や花を刺繍したり手持ちのバックも刺繍したりしていた。すると一部の女の子から「私にもやって欲しい」と言われるようになり、菊那は「菊那裁縫店」と呼ばれてしまう事もあるほど人気になっていた。
けれど、それをよく思っていないメンバーもいたのだ。ある日から菊那の状況は一転する。
普段通りに学校に到着し、クラスに入って友達に「おはよう」と挨拶をした。けれど、誰も挨拶をせずに、こちらを一別した後にすぐに視線を外して、他の友達と話したり本を読んだりしている。
菊那は始めは「聞こえなかったのかな?」と思い、自分の準備が終わった後に特に仲が良かった友達のところに駆け寄った。
「おはよう!この間、頼まれたポーチ出来たよ。猫のマークを付けて、可愛く出来たと思うんだけど」
「…………」