花屋敷の主人は蛍に恋をする
「こんなだっさいポーチなんて、佳菜ちゃん使わないよねー!」
「たしかにー!こんなの使ってる奴なんて今時いなくない?手作りとかダサすぎる」
そう言って近づいてきたのはクラスで人気者の女の子集団だった。流行りのヘアスタイル、短いスカートにうっすらと化粧もしているだろう。そして、甘いコロンの香りもする。今時の女の子という感じだった。菊那は特に苦手意識はなかったが、好みは合わないかなとは感じていた。それでも挨拶はするし、他愛ない話もしてきたはずだった。それなのに、急に敵意を向けられてしまい、菊那は戸惑い動揺するしかなかった。
「菊那ちゃんさー、こんなの本当にみんなが欲しいと思う?友達だから一応「欲しい」って言うけど、本当は欲しくなんかないの察しなよー。こんなの誰も恥ずかしくてつかいたくないよー。ね、佳菜ちゃんもそうでしょー?」
「………う、うん……」
「ほらねー。菊那ちゃんの自慢にもならない自慢話にはみんな飽き飽きしてるんだよ。だから、みーんなに嫌われちゃうの。佳菜ちゃん、一緒に話そうよ」
そう言うと菊那の手作りポーチをポイッとゴミ箱に捨て、佳菜とクラスの女の子達は菊那から離れてクラスから出ていってしまった。
取り残された菊那と数人のクラスメイト。時が止まったように静まり返ってたけれど、菊那には誰にも近寄らず、触れないようにポツリポツリと話し始める。
菊那はゆっくりと自分の席に座り、顔を俯けた。
あぁ……これがいじめというものなんだ。
菊那は自分がクラスメイトから嫌われていた事を、そして友人である佳菜でさえ離れて行ってしまった事がショックで仕方がなかった。
涙が出てきそうになるのを必死で堪えた。何がわるかったんだろうか。何が気にさわったのだろうか。
考えても、菊那にはわからなかった。
ただただ1人で過ごす1日と、周りからのコソコソと聞こえる悪口と哀れみの視線から逃れられない時間がとても長かった。