花屋敷の主人は蛍に恋をする
「四季の花が咲くという事は、花を育てるのが上手な方なのだと思いました。もちろん、特別な力があるのだとも……。だから、そんな人の力を借りたかったのです。樹さん、この向日葵の種を咲かせてくれませんか?」
まっすぐ彼の方を向き、菊那ははっきりとした口調でそう樹に伝えた。
すると、樹は「なるほど」と、小さく頷き、菊那の手に乗った小さな白と黒のラインが入った種を見た。
「10年以上経っている種は発芽は難しいとされています。………失敗する可能性もあります。………それでも私に預けていただけますか?」
「…………はい。お願い出来ますか?」
「私はかまいません」
「………花屋敷の教授さんでも咲かなかったら、私で咲くはずがない。という、諦めもつくかなって……こんなズルい考えがあったりします。こんな考え方失礼ですよね」
「菊那さんは正直ですね。言わなければわからない話です……それなのに自分の思いを話してくれるのは、優しい証拠です。それに、男は単純なので、頼ってもらえるの嬉しいのですからお気になさらないでください」
そう言うと、樹は菊那の手からハンカチごと向日葵の種を受け取った。