花屋敷の主人は蛍に恋をする
「樹さん、自分の都合でこの屋敷を訪れ、目的を隠して近づいた事、本当にすみませんでした。ですが………向日葵の花、咲かせて欲しいんです。どうぞ、よろしくお願い致しますっ!」
菊那は立ち上がり、樹に向かって頭を下げた。
自分勝手なお願いだとわかっている。けれど、もう頼るところがないのだ。最後の種は無駄になんてしたくない。花が咲かなければ諦める、と言ったけれどそんな簡単には諦められないのが本音だった。
樹は頼みの綱なのだ。
ポンポンと優しく頭に触れるものがあった。ゆっくりと頭を上げると、樹が近づいて菊那の頭を撫でてくれたのだとわかった。
「気になることがありますので………やらせていただきますね」
「あ、ありがとうございますっ!!」
菊那はまた目に涙を浮かべて樹に何度もお礼の言葉を伝えた。
この花屋敷にも咲いている向日葵の花。
樹が手にしている種をきっと咲いてくれる。そう菊那は信じていた。