花屋敷の主人は蛍に恋をする
13話「スターリング シルバー」
13話「スターリング シルバー」
菊那が樹に自分の過去を打ち明けてから数日が経った。
彼にお願いすれば大丈夫。そう思っているけれど、考えれば考えるほどに不安になってしまうものだった。
まず向日葵の種を植える時期だが、本来ならば5月なのだ。今は春になったばかりで寒い日もある。種を植えるには早かった。けれど、彼には不思議な庭園がある。そこで育てれば大丈夫なのだろうか。
それにあの向日葵の種を調べるとしても、種を割ってしまい中身がなかった場合はすぐに芽は出てこないとわかってしまうのだ。それは怖かったからこそ、自分では試せなかったのだ。「もう日葵の向日葵は咲かない」という現実を突きつけられるのが怖いのだ。
毎日のように樹からの連絡を待っていた。彼からの連絡が来るのを待っていつつも、来ない事にもホッとしてしまう。
いつもと変わらない日を過ごしていたが、最後に樹に会ってから5日後の事だった。
菊那が仕事を終えて帰宅したと同時にスマホが鳴った。画面には「樹さん」と書かれている。
菊那は通話ボタンを押すのに少し躊躇ってしまう。大きく深呼吸をした後に、ゆっくりとボタンを押した。