花屋敷の主人は蛍に恋をする
『こんばんは、菊那さん。樹です。今、お時間よろしいですか?』
「こんばんは。今、帰宅したので大丈夫です」
『それはよかった。菊那さん、明日明後日はお休みでしたよね?』
「はい。そうですが………向日葵の事ですか?」
『はい。明日お会いしたいのですが…………宿泊の準備をしていらしてくれませんか?』
「……………え…………」
予想外の言葉に菊那は、固まってしまったが頭でその意味を理解した途端に、体温が一気に上昇するのを感じ、鏡を見ずとも今の自分の顔が酷い事になっているのがわかった。電話でよかったと菊那は思ってしまう。
『何か予定はありましたか?』
「い、いえ……樹さん……えっと、その………どうして泊まりなんですか?」
『それは………秘密です』
クスクスと楽しそうに笑いながらそう言う樹の声が耳に入ってきて、菊那はドキドキが増してしまう。
『それでは、明日の10時に迎えに行きます』
「え、あ………はい」
『では、明日。おやすみなさい』
「………おやすみなさい」
いつもの挨拶をして電話を切った後、菊那はその場に座り込んでしまった。
あの樹に泊まりをお願いされたのだ。ドキドキしてしまうのは当たり前の事だろう。
「な……何で泊まりなの!?向日葵の芽が出るのを夜通し見守る………なんて事はないよね?」
気が動転してしまっているのか、思考がおかしくなっている。
頭がぐるぐるして正常に頭が働かないのかもしれない。