花屋敷の主人は蛍に恋をする
14話「ポラリスアルファ」





   14話「ポラリスアルファ」



 「そう言えばお聞きしていませんでしたが、菊那さんはどんなお仕事をされているのですか?以前お話されていた裁縫関連でしょうか?」
 「いえ。今は近くのカフェで働いてます。土日は学生さんのバイトが入っているので、平日のゆったりとした時間に働けるし、休憩で美味しいコーヒーが飲めるんですよ」
 「それは羨ましいですね」


 何事もなかったかのように、菊那と樹は飛行機の中で至って普通の会話を交わしていた。
 機内は空いていた。いや、ゆったりとしていたの間違えだ。
 菊那と樹が飛行機に搭乗すると案内されたのがプレミアムクラスの席だった。あまりに豪華な空間と待遇にビクビクしてしまった。けれど、少し離れてはいるが隣には樹が居たため、いろいろと説明をしてくれたので安心出来た。美味しいコーヒーや軽食も出てきて、至れり尽くせりだった。


 「………あの………樹さん。もう乗って、ご飯も食べてしまってるのですが………こんなに特別な席をプレゼントしていただいてよかったですか?」
 「もちろんですよ。プレゼントするなら、より喜んでもらった方が私も嬉しいでので。それに、デートでもあるので」
 「…………樹さんは本当にお上手ですよね」
 「本当の事なのですよ。………先程話した続きですが、菊那さんはもう刺繍はされていないのですか?」




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