花屋敷の主人は蛍に恋をする
「………なぁ、菊那。菊那は史陀さんの事、どこまで知ってる?」
「え?……私より年上で大学の教授をしてる………ってこと?」
先程まで、微笑んでいた日葵の表情が、スッと温度が変わったように真剣なものになっていた。
菊那はその雰囲気を感じとり、思わず小声になってしまう。
「そうか……知らないみたいだな。菊那は、花屋敷の魔法には気づかなかった?」
「え………」
「史陀さんは随分菊那の事を気に入ってるみたいだから。………あの人の魔法をといてあげて」
「魔法を………それってどういう………」
魔法?
日葵は何の事を言っているのかわからずに、菊那は詳しく話を聞こうと彼に問いかけようとした。
「菊那さん、そろそろ行こうと思いますが、お話しは終わりましたか?」
「っっ!………樹さん……」
いつの間にか菊那達のすぐ傍まで来ていた樹に気づかず、菊那は体を震わせ、驚いた表情で彼の方を振り返ってしまう。