大嫌いなアイツ〜幼馴染は今日も私を〜
声が聞こえて清華の方を見ると、清華はゆっくり目を擦りながら身体を起こして、俺を見ると、徐々に目を見開いた。
あ、これは。ヤバイのでは。
「何で……零が」
「野菜のお裾分け持ってきただけだから。お前の家に俺がいると気分悪いだろうし、帰るな」
「じゃあね〜」
舞香は、俺と清華の今の関係を知らないのか、能天気な笑顔で手を振る。
「零……ありがと」
まだ寝ぼけているのかボーッとした清華は、俺の目をうっすら見て、そう呟く。
「寝起きだと素直なんだな」
目が合うと何か言われそうだったから、俺はそう言い残して背を向けると、さっさと家から立ち去った。
ありがとうと言われた。
たったそれだけのことなのに、アイツとのわだかまりが少しだけ溶けたような気がして、少しだけ頬が緩んだ。