クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 謎の言葉をこぼしながらくるりと振り返ったライアンの手には、深紅のベルベット地に金糸の刺繍が施されたジュエリーボックスが握られていた。まるでそれ自体が芸術品であるかのようなジュエリーボックスに収められたジュエリー。
 目にしなくとも、それが計り知れない価値を持つ品であろうことは想像出来た。
「これは祖母が生前、俺の未来の妻となる女性のために高名な細工師に依頼して作らせたものなんだ」
 大股で戻って来たライアンは、再び私の隣に腰掛けるとジュエリーボックスを開く。中から現れた眩い金細工のペンダントに、思わず目を細くした。
「だからこれは、君のものだ」
 だけど続くライアンの台詞で、細めた目は一瞬でまん丸になった。
「こんなに素敵なペンダントが、私のもの!?」
 目を皿のようにしたまま驚きを隠せない私の様子に、ライアンはクツクツと小さく笑い、その手にペンダントを取り上げた。
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