クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 すると、ペンダントトップの立体的な装飾が単なる細工ではなく、蓋になっていることに気づく。えっ?と思いながら蓋の部分をそっと押せば、スルリと横にスライドするではないか。
「ライアン、これ……っ!」
 蓋の下からは、なんと鏡が現れた。
「あぁ。なかなか珍しいだろう? 実を言うと、これはただの装身具というより、祖母が願いを込めたものなんだ」
「願い、ですか?」
 私の問いかけに、ライアンはフッと口角をあげて、懐かしそうに目を細くした。
「あぁ。隣国から嫁いできた祖母は実に気風のいい女性で、男顔負けに豪胆だった。俺のアレルギーが発覚し、上を下への大騒ぎの周囲を尻目に『時が来れば自ずと解決する』とひとりドーンと構えていた。だが、祖母も内心では心配していたのだろう。我が国でも鏡には、古くから権力や権威の象徴的な意味合いがあるだろう? 彼女の故郷では、鏡には子孫繁栄の意味もあるようでな。密かに、願を掛けていたらしい」
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