クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 この島では、代々修道女たちの手によって希少なブドウの栽培が行われており、国内外で非常に人気が高い。このブドウ栽培によって、修道院はしっかりと経営ができているのだ。ここまで経済的に自立した修道院というのは、珍しいと言える。
 とはいえ、そのブドウとて水と肥料をやっておけば、勝手に育つというものではない。生育には、環境の要因が大きな影響を及ぼす。だから、天気や気温などに気を配って、その都度適切な対処をしてやらねば、あっという間に品質が落ちてしまう。
 八歳の時から手入れを間近に見てきた私は、それをとみに実感している。
「ごちそうさまでした」
「マリアも食後のお茶をどう?」
 朝食を食べ終えたタイミングで、カーラがお茶を差し出してくれる。
「あら、ありがとう」
 温かな湯気を立てる紅茶を受け取りながらお礼を告げる。
「カーラ、ちょっとこっちに来て」
「えー? なぁに?」
 カーラは私の隣に腰を下ろすより前に別の友人から声を掛けられて、自分の分の紅茶を持ってそちらに向かった。
 ……ふふ。相変わらずの人気者ね。
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