クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 マリアがなんの先入観もなしに、覚えた感情をそのまま口にのせるのを、修道院長が途中でピシャリと遮った。その表情は、先ほどまでの悲愴感に満ちたそれとは違い、憤りとやるせなさが滲んでいた。
 マリアの発言は、俺の想定の遥か上をいくものだった。もちろん、彼女の答えはいっさい偽りのない正直なもの。ただし無知ゆえにか、彼女の発言はあまりにも正直すぎた。
「即刻、ここを出て行きなさい! そうして二度と、ここへの立ち入りは許しません!」
「っ! 申し訳ありません!」
 顔面を蒼白にして肩を震わせるマリアを横目に、俺の心は不謹慎な喜びで満ち満ちていた。
 するとここで、修道院長が視線をゆっくりとマリアから俺に移した。
「……ライアン・エルモンド騎士団長、このように最悪の形で裏切られ、落胆しています」
 静かに告げられた叱責に、俺は一層深く頭を垂れた。
「返す言葉もございません」
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