クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
ブドウ畑に着くと、木々の状態を見ながら奥に向かってゆく。
「なんとか無事みたいね」
畑の端で、ホッと一息ついて足を止めた。
いつくか落ちてしまった実はあるが、全体で見れば極僅か。昨夜の窓の揺れ方を鑑みれば、この程度で済んだことは幸運と言えるだろう。
――ザッ、ザッ。
その時、ブドウの木々の奥で、土を踏む靴音があがる。修道女たちの楚々とした足運びとは違う、重々しい踏み出し方に、一気に緊張が高まった。
「だ、誰!?」
誰何の声は、上擦っていた。
「これは失礼。驚かせてしまったようだ」
……え? 男の人の声!?
最初に聞こえてきたのは、焦る私とは対極の堂々としてハリのある声だった。修道院での八年間はもちろん、それ以前にも聞いたことのない、耳に心地よいバリトンボイスは、それだけで私の胸をざわざわと落ち着かなくさせた。
次に、木々の間から覗いたのは、見上げるほど長身のシルエット。その直後、威風堂々と美丈夫が姿を現した。
目にした瞬間、全身を痺れるような電流が走り抜けた。
「なんとか無事みたいね」
畑の端で、ホッと一息ついて足を止めた。
いつくか落ちてしまった実はあるが、全体で見れば極僅か。昨夜の窓の揺れ方を鑑みれば、この程度で済んだことは幸運と言えるだろう。
――ザッ、ザッ。
その時、ブドウの木々の奥で、土を踏む靴音があがる。修道女たちの楚々とした足運びとは違う、重々しい踏み出し方に、一気に緊張が高まった。
「だ、誰!?」
誰何の声は、上擦っていた。
「これは失礼。驚かせてしまったようだ」
……え? 男の人の声!?
最初に聞こえてきたのは、焦る私とは対極の堂々としてハリのある声だった。修道院での八年間はもちろん、それ以前にも聞いたことのない、耳に心地よいバリトンボイスは、それだけで私の胸をざわざわと落ち着かなくさせた。
次に、木々の間から覗いたのは、見上げるほど長身のシルエット。その直後、威風堂々と美丈夫が姿を現した。
目にした瞬間、全身を痺れるような電流が走り抜けた。