クールな騎士団長は獣な本能を初夜に目覚めさせる
 まさかこれは、マリアを奪った俺に対する神の報復ではあるまいな……? そんな疑問が脳裏をよぎった。
「……んっ」
 その時、隣のマリアが長い睫毛を震わせて薄く瞼を開く。現れた至高のアメジストにドクンと鼓動が跳ね、もんもんもやもやが募った。
「おはよう、愛しい奥さん。起きたのかい?」
 なんとか理性を寄せ集め、もんもんもやもやを押さえ込んで紳士の仮面を貼り付ける。そして精一杯のさりげなさで彼女の柔らかな頬を撫でた。
 ……あぁ。なんと滑らかな触り心地なんだ。
 その柔肌をもっととっくと撫でまわしたい。……いや、手だけでなく唇で味わいけたい。……いやいや! 唇だけでなく、この際ガブッと噛みついてはむはむとし、舌でその甘さを――。
「ん、ライアン……、おはよ」
 グァッ! 起き抜けの彼女が舌ったらずに告げた「おはよ」の破壊力たるや凄まじい。ブワッと膨らんだもんもんもやもやが下からグイグイと突き上げて、紳士の仮面を引っぺがそうと猛攻を仕掛けてくる。
「ライアン? どうかしたの?」
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