魔法少女ルカは世界を救いたい!
生きたいか、生きたくないかを尋ねられても、朦朧とした意識の中、体中に走る痛みが邪魔をして真面に考えることができない。
徐々に体中を蝕んでいく痛みから逃れることができるなら、どちらでも良いと思った。
男はざくりと雪を踏みしめると、私との距離を少しずつ縮めていく。
「時間は残されていない。ここで命の灯火が尽きる前に我によって血染めにされるか、生きて死を待つか選べ」
(……どっちも死ぬだけじゃない)
ふっと力のない笑みが零れた。
死神のような男に血染めにされるなんて、今よりももっと痛そうだ。
どうせ死ぬなら、生きてさほど痛くない死の方がいい。
(……そんな選択、)
「……生きたいに、決まってる」
そう言えば、男はふっと笑ったような気がした。
足下まであるローブを引きずるようにして歩く男は、やがて私の目の前まで来ると、姿勢を低くして片膝をつく。
そして、革手袋を外した雪のように冷たい左手がそっと私の額に触れた。
「では、力を与えよう」
その瞬間、全身が淡い光に包まれる。
触れた額から暖かい何かが全身を駆け巡った。
まるで猛烈な勢いで何かが男から流れ込んでくるような―― 体験したことのない、不思議な感覚だった。