きみがため
――重症喘息。

それが、光の疾患名だ。

喘息持ちの人はたくさんいるけど、医学が進んで、今では薬や日常生活の諸注意でコントロールできる人が増えている。

だけどごくまれに、いまだ自分に合ったコントロール方法を見つけられず、入退院を繰り返している人がいる。

光の喘息の症状が悪化したのは、二年前からだった。

夜中に胸を押さえて苦しがっていたり、通学途中に息切れが激しくなって立っていられなくなったり。

常に持っている吸引機ですらおさえられなくなって、光はそのたびに入院していた。

一年に、二~三回。繰り返す入院は、まだ子供の光の精神にダメージを与えるには充分だった。

次に発作がくるのはいつだろう。

こんどこそ、息ができなくなって死んでしまったらどうしよう。

光はいつも、そんな不安と闘っている。

そのせいか、入院したときは、たいてい我儘になる。

きっと、不安を打ち消すような、甘えられる存在が欲しいのだろう。

だけど、うちの家族では、それを満足にしてあげることができない。
 
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