きみがため
十月初旬。文化祭本番当日。

「何コレ、めちゃくちゃ怖かったんだけど!」

「あの女ユーレイしつこい! 泣くかと思った」

「急にコンニャクが大量にぶつかってきたの、マジでびびったんだけど!」

私たちのクラスのお化け屋敷は、大盛況だった。

空き教室と、理科室を繋いだロングコースで、うちの高校の文化祭史上もっとも凝ったお化け屋敷と言われた。

コースの前半は、日本の墓場がイメージされている。

ドロドロというお決まりの音響のもと、ダンボールで精巧に作られたお墓が並び、壁から突然出てくる手やコンニャクに驚かされながら、美織が扮する女ユーレイをはじめとしたお化けたちに次々襲われる。

次は、理科室。

不協和音を奏でるピアノの旋律が流れる中、ブルーライトに照らされた骸骨やホルマリン漬けの瓶の中を、時折爆音に驚かされながら恐々進む。

そして最後に、人体模型に扮したクラスの男子が急に動き出し、悲鳴をかっさらう。

私も一度、夏葉と一緒に入ったけど、どこで何がでてくるか分かっていながら、すごく怖かった。

ユーレイの美織と化け猫の杏も執拗に襲ってくるし、本気で逃げ出したくなったほどだ。
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