きみがため

「みんなお疲れ! 増村先生から差し入れだぞ~!」

文化祭が終わって、ようやく片付けが一段落した頃、コンビニのビニール袋を抱えたクラスの男子たちが、テンション高く教室に入ってきた。

ビニール袋の中には、ペットボトルに入ったジュースやお菓子が大量に入っている。

「打ち上げだ~!」

お調子者の斉木くんの号令で、皆好きなところに座って、今日のことを話しながらお菓子を食べジュースを飲む。こんな時間に、教室で堂々とこんなにお菓子を食べるなんて、特別な感じがしてわくわくした。

「カンパーイ!」

女子たち数人で、ジュースの入った紙コップを合わせた。

「今日の主役は、やっぱ美織だよね。あの気合の入った演技! 子どもが来ても、容赦ないんだもん」

「当たり前じゃない。子どもだからって、世の中の怖いことから目を背けさせてどうするのよ」

杏の言葉に、美織が鼻高々に答えている。

「杏の猫娘も可愛かったよ」

夏葉が言うと、杏は照れたように笑う。

「やっぱり? 夏葉の音響も最高だった。あのドロドロいうやつ、どこから持ってきたのよ」

「ネット検索して、フリーの曲の中からダウンロードしたの。いろんな効果音があったよ。真菜もありがとう。真菜いなかったら、ここまで纏まんなかったと思う」

ふいに話題に上げられ、「そうかな?」と頭を掻いた。

「うん。裏方的な仕事が、一番大変だもんね。特に増村先生の許可取る系のやつは。あの先生、どこにいるか分かんないんだもん」

「そんなことないよ。だいたい喫煙所にいるし」

「マジで? だからあんなタバコ臭いんだ」
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