きみがため
だけど、浦部さんには、俺の声など届いていないようだった。
前の席に座っている男性客が振り返るほど、大きめの声で俺に食ってかかってくる。
スッと、胸に冷気が入り込むような心地がした。
浦部さんは、何も知らない。
俺が、これまでどんな想いで生きてきたか。
どれだけ、特別な、ただひとつの、彼女の笑顔を追い求めてきたか。
それは恋だとか、付き合いたいとか、そういった世界の話じゃない。
彼女だけ。
ただ、それだけのことなんだ。
「どこがいいとか、そういうんじゃないんだ」
気づけば、積もり積もった想いを吐き出すように、そう呟いていた。
すると浦部さんは、何かが癇に障ったのか、真っ赤になってガタンッと立ち上がる。
そしそのまま、大股に店を出て行った。
店にいる客が、俺の方を見てヒソヒソと何やら言い合っている。
「小瀬川くん、モテモテだね~」
いつの間にか近くに寄ってきた店長が、耳元で、茶化すような言い方をした。
今更のように顔が熱くなったけど、もうすべてがあとのまつりだ。
悶々とする気持ちを振り払うように、仕事に熱中する。
――『あと、それから、私、就職じゃなくて進学することにしたの』
ふと、彼女の声が耳によみがえった。
途端に、心の緊張が解けたように、和やかな気持ちになる。
彼女のエッセイを応募したのは俺だ。
このことは一生知らせるつもりはないけれど。
君が前を向いてくれれば、それでいい。
僕は君のために、光となり陰になって、君の未来を明るく照らすから。
前の席に座っている男性客が振り返るほど、大きめの声で俺に食ってかかってくる。
スッと、胸に冷気が入り込むような心地がした。
浦部さんは、何も知らない。
俺が、これまでどんな想いで生きてきたか。
どれだけ、特別な、ただひとつの、彼女の笑顔を追い求めてきたか。
それは恋だとか、付き合いたいとか、そういった世界の話じゃない。
彼女だけ。
ただ、それだけのことなんだ。
「どこがいいとか、そういうんじゃないんだ」
気づけば、積もり積もった想いを吐き出すように、そう呟いていた。
すると浦部さんは、何かが癇に障ったのか、真っ赤になってガタンッと立ち上がる。
そしそのまま、大股に店を出て行った。
店にいる客が、俺の方を見てヒソヒソと何やら言い合っている。
「小瀬川くん、モテモテだね~」
いつの間にか近くに寄ってきた店長が、耳元で、茶化すような言い方をした。
今更のように顔が熱くなったけど、もうすべてがあとのまつりだ。
悶々とする気持ちを振り払うように、仕事に熱中する。
――『あと、それから、私、就職じゃなくて進学することにしたの』
ふと、彼女の声が耳によみがえった。
途端に、心の緊張が解けたように、和やかな気持ちになる。
彼女のエッセイを応募したのは俺だ。
このことは一生知らせるつもりはないけれど。
君が前を向いてくれれば、それでいい。
僕は君のために、光となり陰になって、君の未来を明るく照らすから。