きみがため
そのとき、ひときわ強い風が辺りに吹き荒れた。樫の枯れ枝がザワザワと共鳴し、冷たい冬の風が頬を撫でていく。

私ははっと顔を上げて、うごめく樫の木を見上げた。

抜けるように青い空、緑の芝生、病院の白い壁。

この景色を知っていると思った。

遠い昔、見たことがある。
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