きみがため
そこは、驚くぐらい狭い部屋だった。

広さはおよそ六畳程度だけど、壁の二面がぎっしり本棚で埋まっているから、より狭く感じる。

真ん中には、長テーブルが置かれていて、上座のパイプ椅子に女子生徒が座って本に目を落としていた。

三つ編みに眼鏡の、いかにも文学少女、といったイメージの人。

顔を上げ、文学少女が私を見た。

「部長の川島です。三年です。二年の水田さんですよね? 増村先生から話は聞いています、好きに見学してください」

「あ、はい……」

サクサクと話を進めると、川島部長は再び本に没頭しはじめた。

本棚の手前には、男子生徒がひとり、胡坐を組んで座っている。

彼も本に没頭していて、こちらのことには我関せず、といった具合だ。

彼らがときどきページを捲る音だけが響く、静かな空間だった。

ていうか、好きに見学してと言われても、狭すぎて、ぼうっと立つ以外何も出来ない。

「あ、あの……」

「何か?」

おずおずと声を出すと、川島部長が再び顔を上げて眼鏡を光らせた。

「他の部員の方は……?」
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