きみがため
――『お兄さんの言葉、私好きだよ。また聞かせてね』

繰り返し、彼女を思った。

懺悔のように、彼女に言葉を綴った。

絵でも描けと、父親が買ってきたスケッチブックに。あの子が好きだと言った僕の言葉を、あの子のために、来る日も来る日も書き続けた。

自分のわがままが人の命を奪った事実は、僕を変えた。

見違えるほどいい子になった僕を、皆は疑問に思うでもなく、喜んで受け入れた。

長引いた入院のせいで、就学猶予が認められ、二年遅れで中学に入学した。

そこでも僕は、優等生を演じた。

恐かったんだ。自分のせいで、また誰かを傷つけるのが。

誰にも迷惑をかけず、誰かの役に立つ。

そうすることで、過去の罪を晴らそうと、僕は必死だった。
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