きみがため
「私と、そこにいる一年の田辺くんと、今日は来てないけどあとひとり。以上です」
田辺くんらしき男子生徒が、私に向けてぺこりと頭を下げてきたので、私も慌てて頭を下げた。
くるくる頭の黒髪の、童顔の男の子だ。
その手元には、背表紙に『ドグラ・マグラ』と書かれた、なんだか難しそうな本。
「全部で三人ってことですか……?」
「そうです」
川島部長は、何を聞いても、声のトーンも表情も一切変わらない。
それきり、会話は途切れてしまった。
仕方なく、私は本棚に近づき、本や資料を物色することにする。
日本文学全集や、ロシア文学全集など、図書館でしか見かけないような分厚い本がたくさん並んでいた。
旧い本独特の、どこか懐かしい香りが、鼻をかすめる。
静かな部屋に、半開きの窓からそよぐ風が、放課後の音色を運んでくる。
グラウンドでノックに励む、野球部の声。
吹奏楽部が奏でている音楽は、『スター・ウォーズ』のテーマ曲だ。
どこからともなく遠く聞こえる、ワッと盛り上がる笑い声。
田辺くんらしき男子生徒が、私に向けてぺこりと頭を下げてきたので、私も慌てて頭を下げた。
くるくる頭の黒髪の、童顔の男の子だ。
その手元には、背表紙に『ドグラ・マグラ』と書かれた、なんだか難しそうな本。
「全部で三人ってことですか……?」
「そうです」
川島部長は、何を聞いても、声のトーンも表情も一切変わらない。
それきり、会話は途切れてしまった。
仕方なく、私は本棚に近づき、本や資料を物色することにする。
日本文学全集や、ロシア文学全集など、図書館でしか見かけないような分厚い本がたくさん並んでいた。
旧い本独特の、どこか懐かしい香りが、鼻をかすめる。
静かな部屋に、半開きの窓からそよぐ風が、放課後の音色を運んでくる。
グラウンドでノックに励む、野球部の声。
吹奏楽部が奏でている音楽は、『スター・ウォーズ』のテーマ曲だ。
どこからともなく遠く聞こえる、ワッと盛り上がる笑い声。