きみがため
まるで、ハンマーで頭をガンと頭を殴られたみたいだった。

小瀬川くんのその一言は、私にとってはそれくらい衝撃的だった。

彼が言ってるのは、明らかに美織と杏との関係のことで。

クラスの誰も、そのことには触れて来ないのに。

お母さんだって、誤魔化せたのに。

話したこともない小瀬川くんに、バレていた――。

闇を背後に浮かぶ、きれいに整った小瀬川くんの顔が、急に怖くなる。

凍り付く私に、小瀬川くんは見透かすような目をして、なおも容赦のない言葉を投げかけてきた。

「あいつらとつるむのが苦痛なら、ひとりでいろよ。見ててしんどいんだよ。自分を偽ってまで、一緒にいる必要ないだろ?」

――見てて、しんどい。

彼の言葉が、刃のように私の胸に刺さる。

私、端から見たらそんな風に見えていたんだ。
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