きみがため
小瀬川くんに言われた言葉は、次の日も、ずっと頭の中から離れてくれなかった。

人の事情も知らないで、と腹を立てては落ち着いての繰り返し。

だけど、本当は心の奥底で理解していた。

小瀬川くんの言ったことは、正しい。

私は、ひとりになる不安から、ずっと顔を背けていた。

この苦しみから抜け出すには、勇気を振り絞って、美織と杏から離れるしかないんだ。

きっかけを、ずっと探してた。

だけどきっかけなんて、待っていても来ない。

――自分で作るしかないんだ。

昼休み。

「あ~、お腹空いた。杏、早く食べよー」

「あれ? 美織、今日パン? おいしそう」

数学の授業から解放され、伸びをしながら会話をしている美織と杏。

彼女たちが私の机に近くの机をひっつけようとしているのを見て、私は覚悟を決めて立ち上がった。

「……今日から、私、外で食べるね。だから、ふたりで食べて。ごめんね、今までありがとう」
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