きみがため
閑散としている廊下を歩み、相変わらず倉庫然とした文芸部のドアの前に立つ。

ノックすると思った通り返事はなくて、私は迷わずドアノブを掴んだ。

鍵がかかってるかもと不安になったけど、ドアノブは容易に捻ることができた。

ホッとしつつ、ドアを開く。

「……っ」

次の瞬間、私は声にならない声をあげていた。

窓辺のパイプ椅子に小瀬川くんが腰かけ、開け放たれた窓から外を眺めていたからだ。

「小瀬川くん……?」

よく見ると、小瀬川くんの手には、コンビニのおにぎりが握られていた。

長テーブルにはお茶の入ったペットボトルも置かれている。どうやら、お昼ご飯を食べていたみたい。

予想外の先客に、唖然としてしまう。

「……どうして、ここにいるの?」

聞くと、小瀬川くんは、見れば分かるだろ?とでも言いたげな顔をした。

「飯、食ってるから」

「え? でも、ここ文芸部……」
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