きみがため
次の日、私は朝から、美織と杏と話す機会を伺っていた。

だけど勇気が出ないまま、放課後になってしまう。

クラスメイトと揉めた日以来、まったく放課後の作業に参加しなくなっていた美織と杏は、今日も終わるなり教室を出ようとしていた。

その姿を見て、焦りが込み上げる。

ふと、窓辺の席で、バッグを片手に斉木くんと話している桜人が目に入った。

――『逃げるなよ。どうしたら前に進めるか考えろ』

昨日聞いた桜人の声が、耳に蘇る。

――『この先も、何かつらいことがあるたびに、お前はそうやって逃げる気か』

桜人との会話の記憶に後押しされるように、気づけば私は、教室を飛び出していた。

「……待って!」

廊下を走り、その先にいた、美織と杏の背中に向かって声を出す。

立ち止まったふたりは、怪訝そうに私を振り返った。

冷たい視線に、一瞬また怖気づきそうになったけど、どうにか自分自身を奮い立たせる。

このままじゃだめだ。

このままだと、何も変わらない。

私を叱ってくれた桜人にも失礼だ――。

「今まで、ごめんなさい」
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